1. 灰被刻文花器 高54×径20×34cm  
松崎健さんの新たな展開に思ふ

 松崎さんはこの五年の間に作風が一変した。私が身を置く民芸の世界から新たな創作活動の場へと飛び立った。
 この事は私にとって淋しい事である反面、松崎さんが民芸の束縛を離れて自由にのびのびと仕事が出来るのを心から喜びたい思ひもする。松崎さんが試みている焼〆、織部、志野は夫々古い伝統と郷土性を持ち、茶道とのかかわりも古いからこれに挑戦するには余程の教養と勇気がなくては出来ない。私にとってもこれらの焼物は最も心ひかれるものだが、その奥行きの深さを思ふと手を出すことが出来ない。松崎さんがあえてこれを始めたのは十分の準備と自信があったからこそと思ふが同時に松崎さんの性格による事も大きい。松崎さんの干支は五黄の寅でこれと決めたら逡巡せずに突き進み決して挫折する事がない。私は羊年の生まれで師の濱田庄司先生に常々若い時は失敗を恐れず可能な手法は総て試みよ。それがやがて自分の財産になると言はれ続けたがついつい臆して十分に実行しなかったのが悔やまれる。
 今、松崎さんがあらゆる可能性に賭けている姿を見ると改めてその言葉を思い出し、松崎さんの決意を賞め讃えたい。勿論五年足らずの間にすべてが完成するものではない。今回の個展の会場を見ても、余りにも多彩な手法に溢れていてややもすると渾然とした趣にかけ、又極はめて伝統的な作品と新しい造形との関聨や夫々の真の創意を見出す事の難しさを感じる。
 しかしこれらの些細な欠点を越えて活気に満ち満ちた雰囲気は松崎さんがやがてすべてを克服し独自の松崎陶芸の確立をなしとげる洋々たる未来を示すものとは思はれるが、同時に松崎さんの選んだ道は他力の恩恵を受けず、すべて地力でなしとげねばならぬきびしい世界であることを肝に銘じ、一層の精進を期待してやまない。
平成九年十一月吉日
島岡 達三
ごあいさつ

 今回の二十回記念展に再び窯変を選びました。十五回の記念展で仕事が変る切っ掛けとなった異変窯変です。
 前回は益子の土での窯変でしたが今回、信楽、備前、平山(愛知)この三種類の土を同時に同じ窯で焼いてみました。それぞれの土の持つ性質が良く現れていると思います。本来ならば土に合わせて焼くのですが、自分なりに窯にまかせて焼き上げました。
 私の仕事を変えた原点がこの窯変の中にあり、そして織部、志野と続く分岐点になったのは事実であり、なぜ窯変から織部、志野なのかはこれからの自分の仕事の中でゆっくり探って行きたいと思います。
平成九年十一月吉日
松崎 健
【表紙】【】【】【】【】【】【】【】【
】【10】【11】【12】【13】【14】【15】【16】【17